梯 郁太郎氏に捧げた曲「Song for KAKEHASHI」

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梯 郁太郎氏はローランド、そして「The Brand-New Concert 2017」を主催する「かけはし芸術文化振興財団」の創業者。僕は梯氏が作ってきた数々の楽器を使い生業としてきました。梯氏の生み出した電子楽器…それは僕にとって、画家の立場に例えるならば広大なパレットと多彩な絵具を頂戴したものと同じであり、それを自由に使わせてもらいながら絵を描いてきました。言い換えれば梯氏がいなければ今の自分がいません。そして梯氏がMIDIの制定に貢献し世界中に浸透させた功績。それは時を30年経て授賞したグラミー賞(テクニカル・グラミー・アワード)どころか、世界中の音楽家やクリエーターから見ればノーベル賞の賞賛を贈るべきレベルの業績といっても過言でないと考えます。

僕は幸せものです。そんな梯氏とは20年以上にわたり直接交流を持たせて頂き、浜松のご自宅にも何度もお声がけを頂きました。また梯氏が上京するとよく食事に誘って頂き、そこでもご高齢にも関わらず、まるで子供のような澄んだ熱い目でこれからの電子楽器への夢や今後生み出したい楽器のビジョンなどを何度も拝聴させて頂きました。丸々終日、楽しく会話をさせて頂いたことも多く、お話を聞いているうちに僕も一緒にワクワクな気持ちにかられ、新たな夢と音楽をやってきて本当によかった、という実感を抱かせてもらいました。

本コンサートで演奏させて頂きました「Song for KAKEHASHI」は 曲名どおり、そんな梯氏に満身の感謝の気持ちを込めて捧げた曲です。ステージでも述べさせてもらいましたが元々は梯氏がグラミーを授賞したとき、冨田勲先生といち早くお祝いにご自宅を訪れた際、ちょうど梯氏の偉業をドキュメント化したビデオ制作が進行していたので、この曲をテーマとして贈らせて頂きました。その時はピアノ、バイオリン、チェロの編成で書いて録音しましたが(この時の模様は過去にも投稿してきました)、この曲を聞いた梯氏からはもったいないほどの笑みを頂きました。

そして今回のコンサートでは僕にとって贅沢にもオーケストラを使わせて頂けるということで、「Song for KAKEHASHI」は新たにオーケストラ用に何日も何日も時間をかけて書いていきました。第2部の冒頭曲となるので新たにOvertureも加筆しています。出演している大作曲家の面々に交えて、このような場を頂いたわけですから、大変恐縮な思いもそうですが、絶対に失態は許されないプレッシャーも相当受けておりました…。そんなときでも、総監督の渡辺俊幸先生にはメンタルな面までもフォローして頂きました。

そしてピアノコンチェルトとして、あえてグランドピアノではなく、梯氏のこれからの電子楽器のあり方やアプローチを提示し最新の技術を踏襲させたV-PIANO Grandを弾かせてもらいました。V-PIANOには梯氏の電子楽器に対する想いがたっぷりと込められているのをリアルタイムで見てきたからです。

本番のステージ。生楽器の集大成というべきオーケストラの前で電子楽器のV-PIANOを演奏する…本コンサートのテーマである「オーケストラと電子楽器の融合」をこれほど明確に示したステージングはありません。加えて梯氏の電子楽器への想いが詰め込まれた最新の電子パーカッションaFrameを梯氏のご子息である打楽器奏者の梯郁夫さんにも演奏参加をお願いしました。

オーケストラを前にピアノを弾くこと自体、経験が少なく、緊張したのはもちろんですが、それよりも一音一音、梯氏への感謝の気持ちを込めて演奏していくうちに、かつて経験したことのないような感覚にも体が包まれました。ただこの感覚は文章では表せません。今後続きを書かせてもらうかもしれません…

いずれにしても、僕にとってこの上ない、忘れることのできない経験と勉強の場にもなり、本コンサートを通じて音楽でみなさんに喜んでもらえることの意義もしっかりと学ばせて頂きました。
深く感謝します。

Photo by Ami Hirabayashi

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