Foresight 試聴と楽曲解説

Foresight

参加ミュージシャン

Piano, Keyboards篠田元一
Lead & Backing Vocals:Joseph Williams, Tommy Funderburk
Guitar:矢堀孝一, 養父 貴
Bass:永井敏己, 渡辺 建
Drums:菅沼孝三, 木村万作
Steelpan:原田芳宏
Strings :ザ・芸者ストリングス
矢野晴子(Violin), 岩戸有紀子(Violin), 大沼幸江(Viola), 矢野晶子(Cello)

Produced by 篠田元一
All songs arranged by 篠田元一

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1. White Line

Music by Motokazu Shinoda

Piano, Keyboards: 篠田元一
Guitar: 矢堀孝一
Bass: 永井敏己
Drums: 菅沼孝三
Strings: ザ・芸者ストリングス

青空に白い飛行機雲が流れる…そんなイメージを描きながら作った曲です。とにかく、質感の高い大人のフュージョンをやってみようと思いました。ドライブ感のあるリズムにアクティブなストリングスを絡ませるというのは昔からやってみたいアプローチでした。この曲は一番最初にレコーディングした曲なのですが、かなりハッピーな雰囲気の中で始まったのが大きかったように思えます。

ストリングス・アレンジは、リズム録りの後に考えてダビングしました。ストリングス・アレンジは随所で菅沼氏のドラミングからヒントを得て高速フレーズを導入したり、また自分のソロの終盤にユニゾンにさせたりしています。こういう弦アレンジもあまり聴かないでしょう。ゴージャズな雰囲気の中にも、後半はリズム的な仕掛けがあったり、オーケストレーション的な構成になったりと、充実したサウンドに仕上がったと思います。

2. Angela

Music by Motokazu Shinoda
Lyrics by Joseph Williams & Joey Carbone

Lead and Backing Vocals:Joseph Williams
Piano: 篠田元一
Strings: ザ・芸者ストリングス

ジョセフ・ウィリアムスはTOTO時代からの大ファン。彼の参加の話が決まった瞬間、もう狂喜乱舞。すぐさまピアノに向かってみれば、イントロからエンディングまで一挙に曲ができあがっていました。ジョセフの魅力をピアノ+弦楽四重奏によるバラード曲で表現してみたい、というのは最初から決めていました。

最初のデモをジョセフに聴かせたとき、一発で気に入ってもらえました。このときはピアノの伴奏に、フルートの音色でメロディとコーラス・パートをガイドに載せたごく簡単なデモでした。コード進行やサビの転調は、ちょっとAOR的な要素を意識しましたが、これに弦カルの質感を加えれば、室内楽ポップ?的なユニークなものができるだろうというのが狙いでした。ジョセフの甘い歌声は魅力的だけど、所々ピッチが気になるところもありました。ただ、これもジョセフらしい味だし、ジョセフの歌は一切、手を加えていません。苦労といえば、自分のピアノでしょうか(笑)。メロディ、コーラス、弦カルで複数のラインがかみ合っているなかで、ヘタにピアノを入れてしまうと、せっかく仕込んだラインもピアノのサウンドが埋め尽くしてしまいます。ここは音を選びながら、結構神経を使いながら演奏しました。

3. Syaos

Music by Motokazu Shinoda

Piano, Keyboards: 篠田元一
Guitar: 矢堀孝一
Bass: 永井敏己
Drums: 菅沼孝三

レコーディング直前に、このメンバーでライブを行いました。そのとき、このメンバーをあくまでも念頭に置いて作った曲であります。ちなみにSyaos(シャオス)は造語です。中国語で、なんかホワイトカラー的な意味もあるようですが、深い意味は全然考えていません。この曲はちょっとウェザー・リポート的なバンド・サウンドを意識した面もありますが、予想以上にアグレッシブな演奏になりました。この曲の一部は、メロディ、コード(アッパー・ストラクチャー・トライアド)、ベース・ラインがまったく違う調性で動いている場面もあり、ポリ・モード的な展開になっています。面倒なベース・ラインを永井氏は楽々弾いてしまうのが恐ろしい。メロディの力強さの下には、このようなメカニカルなハーモニーやサウンドを隠し込んでいます。

シンセ・ソロは長年しまい込んでいたMinimoogです。オーバーホールで完全蘇らせらので、今作ではたっぷりと使いました。それにしてもすごいのはギター・ソロの場面でしょう。矢堀氏の自由奔放なフレージングに加えて、孝三氏&永井氏のリズム・コンビネーション。もうスキップしまくりで本領発揮。小節の頭が全然わかりません~(笑)。こうして聴くと、普通に聴けてしまうかもしれませんが、演奏している立場にいると、もう頭がおかしくなります。後半のドラム・ソロ、やはり出ました16分3つ取りフレーズ(笑)。エンディングはジノ・バネリ風moogベースでキマリです。なかなかスゴイ、このメンバーならではの演奏がパックできたと思います。

4. Cape Wind

Music by Motokazu Shinoda

Piano: 篠田元一
Guitar: 養父 貴
Bass: 渡辺 建
Drums: 木村万作
Steelpan: 原田芳宏
Strings: ザ・芸者ストリングス

以前、海に出かけたとき、夕暮れの岬の先端の波打ち際、潮風を浴びていたら何となく湧き出てきたメロディをモチーフに作った曲です。メロディも弦のアレンジもそのイメージを踏襲させています。弦とリズム・セクションによるアコースティックなアンサンブルで奧の深いサウンドを目指しました。

このメンバーは以前よりライブでもよく一緒に演奏して頂いている方々です。前作でも「エイプリルフール」を一緒にレコーディングしてきました。万作さん&建さんというリズム・コンビはプリズムの時代からの大ファン。厚い信頼感があります。クールで渋いリズムを打ち出しながら、終盤にかけてもダイナミクスが高まりますが、決して熱くなりすぎず、大人のプレイを聴かせてくれるのがとてもニクイところであります。養父氏のアコギも、なかなか雰囲気をつかんでくれてツボを得た演奏です。原田氏のスティールパンの響きは、とても効果的なアクセントになりました。エンディング部のソロも聴き所でしょう。リズム録りは、流れや雰囲気を重視。何度も演奏して固まってしまうよりも、鮮度の良いテイクを残そうということで、これも2テイク目を採用しました。

5. Cavatina ~映画「ディア・ハンター」より

Music by Stanley Myers

Strings: ザ・芸者ストリングス

この曲は、多くのミュージシャンが取り上げている御馴染みの名曲であります。僕自身、この曲をやろうと思ったきっかけは、師匠の笹路正徳氏が渡辺香津美氏のアルバムでアレンジしているのを聴いたとき、この曲の新たな魅力を発見したからです。ちょっと浮遊感あるハーモニー、哀愁感、これを弦楽四重奏で表現してみたいと思ったわけです。

僕にとってストリングスのサウンドは特別なものです。本作でも前作『Floating Colors』で学んだ数々の手法や表現法は、確実に本作の中にも反映されていると思います。アレンジに際しては、できるだけ無駄な音は使わず、少ない音数で最大限の広がりを出すことを念頭に置きました。シンプルなアレンジですが、各ラインは吟味して書いたつもりです。

実は、この曲は当初、ピアノ+弦カルでやる予定でした。ライブでもその形で何度か演奏してきたし、レコーディング当日までそうするつもりでした。しかし、いざ、レコーディングに臨むと、この響きや空気感の中に、もはやピアノのサウンドは不要と判断しました。ザ・芸者ストリングスのみなさんの演奏はとても素晴らしく、この曲をはじめアルバム全体に素敵な華を添えてくれました。

6. Presto

Music by Motokazu Shinoda

Piano, Keyboards: 篠田元一
Guitar: 矢堀孝一
Bass: 永井敏己
Drums: 菅沼孝三

もともとこの曲は、ドラムンベースの打ち込み系の曲でした。ただ、このメンバーでやるなら、違ったテイストが出せると思ったら、これが大正解。実にうまくいきました。とにかく孝三さんのメカニカルかつパワフルなドラミングには圧倒されます。これを土台にアレンジを組み立てた感じになりました。そして永井氏とのスリップ・ビートが大炸裂。矢堀氏のギターもかなりきてます。全体的にはロック色の強いサウンドに仕上がりましたが、やはりこのメンバーならではのスピード感と爆発力があるでしょう。

シンセ・ソロはMinimoogです。このスリップ・ビートの中でソロを弾くというのは、もう至難のワザです。だからほとんどクリック頼りに弾きました(笑)。レコーディングは爆笑の荒らし。いやー楽しかったです。

7. It’s Your Love

Music by Motokazu Shinoda
Lyrics by Tommy Funderburk

Lead and Backing Vocals: Tommy Funderburk
Piano,Keyboards: 篠田元一
Guitar: 養父 貴
Bass: 渡辺 建
Drums: 木村万作

僕の大好きなトミー・ファンダーバーク(元エアプレイ)が参加。夢のようです。ネットを通じてmp3のデモを聴いてもらった段階から、とても気に入ってもらえたのですが、最初はハイ・トーンのトミーだからキーは高めに書いたのに、さらにキーをあげてほしいと要望がきたときは、まだまだイケル人なんだーと驚きました(笑)。トミーの歌声は本当に素晴らしく、コーラス・ハーモニーなんかは、エアプレイの名残を感じさせてくれます。すごい説得力です。最初のコーラスは譜面に忠実に歌ってくれているのですが、2コーラス目になると、かなりトミーなりの節回しやフェイクを盛り込んでいます。これが実にカッコ良いんですね。この曲も、トミーの参加が決まったら、どんどんイメージが湧き出てきて、あっという間に書けてしまいました。自分ではめずらしく、歌いながらメロディを書いていたと思います。ファンキーな中にも、ちょっとオシャレな雰囲気を盛り込むのが狙いでした。アレンジ/サウンド的にも僕の大好きなAORの要素はうまく表現できたと思います。

8. Desafinado

Music by Antonio Carlos Jobim / Newton Mendonca

Piano: 篠田元一
Guitar: 養父 貴
Bass: 渡辺 建
Drums: 木村万作
Strings: ザ・芸者ストリングス

アントニオ・カルロス・ジョビンのカバーです。妙なコード進行や転調が入ったりするのですが、この独特のアクに魅せられる曲です。ちなみにデザフィナードとはイタリア語で、「調子っぱずれ」という意らしいです(笑)。これもリズム・セクション+弦による完全アコースティック・サウンドです。お気づきだと思いますが、ドラム、ベースは左側、ギターは右側に大きく寄せて、大胆なミックスを施しています。作風的にも60~70年代の少し“いなたいけど華麗”なムードを表現してみました。ストリングスのサウンドもなかなかリッチに仕上がりました。弦カルをこれも数回ダビングしていますが、この優雅なサウンドはダビングの仕方やマイキング、ミックスなどに秘訣があります。ちょっとこれは企業秘密かな(笑)。全体的には、単なるボサのカバーではなく、かなり自分なりの思考を盛り込みました。なかなか気に入った仕上がりです。

9. Upload

Music by Motokazu Shinoda

Piano, Keyboards: 篠田元一
Guitar: 矢堀孝一
Bass: 永井敏己
Drums: 菅沼孝三

かなり以前よりライブで演奏してきた曲です。ファンキーでポップな中ですが、サウンド的には、いろんなシカケを盛り込んでいます。テーマはギターとストリングスのユニゾンです。ライブではホーン・セクションを導入したアレンジで演奏することもよくあったのですが、今回は新アレンジでレコーディングしました。曲の構成を変化させながらベース、ピアノ、ギター、ドラムとソロが次々にフィーチャーされていきます。それぞれ短いソロですが、この辺も聴き所になるでしょう。

10. Presto (Break through Version)

Music by Motokazu Shinoda

Piano, Keyboards & Programmings: 篠田元一
Guitar: 矢堀孝一
Bass: 永井敏己
Drums: 菅沼孝三

6曲目「Presto」のバージョン違いです。前述したように、もともとドラムンベース系の打ち込みをメインにした曲だったので、こちらがオリジナルに近いと言えます。アルバム中、唯一、打ち込みリズムを絡ませたアレンジになっています。ドラム・パートは孝三氏のプレイを大胆にも切り刻んで使ったり、また打ち込みと組み合わせたりしています。矢堀氏と僕は、6曲目とは違ったジャジィな嗜好のソロを別テイクで録音しておいたのですが、ミックス時に試しに打ち込みのドラムを合わせて鳴らしたら、これがCool Jazz風のユニークな雰囲気が出てきてたわけです。そこからイメージが膨らみ、シンセでウッドベースなどを入れて仕上げていきました。これはハプニングからの産物なのですが、ボーナス・トラック以上の作品に仕上がったと思います。途中のユニゾン大会は、最初はモノで始まり徐久に広がり、最後にはサラウンド的なステレオになっていきます。この辺の効果はプラグイン・エフェクトを組み合わせています。

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