Floating Colors 試聴と楽曲解説
参加ミュージシャン
- 篠田元一(Piano)
- 金子飛鳥カルテット
- 金子飛鳥(Violin)
- 高橋香織(Violin)
- 志賀恵子(Viola)
- 柏木広樹(Cello)
以下10曲目のみ
- 原田芳宏(Steelpan)
- 養父 貴(A.Guitar)
- 渡辺 建(Bass)
- 木村万作(Drum)
01-朝霧(作曲:篠田元一)
静寂な朝霧の中に、木の葉の間を通り抜けて放射状に差し込む朝日の光、そんな光景をイメージしながら書いた曲です。切ない旋律のなかにも耽美的な広がりを感じ取ってもらえるでしょう。
ピアノ、バイオリン、チェロのトリオ編成によるシンプルな編成なかで、各パートのフォーカスが変化するバラエティに富んだアレンジを施しました。作曲、編曲から実際のレコーディングまで、何の迷いもなく一挙に進められた曲です。中盤の飛鳥のバイオリン・ソロ、それに後半のピアノ・ソロも聴きどころでしょう。
02-Time and Air(作曲:篠田元一)
「時」の流れと「空気感」、再現性のない空間…。そんなイメージをテーマに書いた曲です。本アルバム用に最初に書いた曲という点でも、この曲がアルバムのリファレンスになったと言ってもいいでしょう。緊張感の高いハーモニーを多用していますが、コード進行は不思議な浮遊感の連続。イントロからエンディングまで、構成を繰り返すことのないONE WAYで流れていきます。弦アレンジにもさまざまな手法を注ぎ込みました。笹路プロデューサー曰く「誰とも、どれとも似てない曲に仕上がったね」と言われたときは、嬉しかったです。
03-月の光(作曲:ドビッシー)
言うまでもなくドビッシーの名曲です。オリジナルのピアノ曲が素晴らしいので、そのイメージを拡張する方向でアレンジしました。弦のアレンジは、優雅で洗練された流れの中にも、少しバロック的なニュアンスを加味しています。美しいピアノとストリングスの機微な動きが相まって、リリカルで質感の高い「月の光」に仕上がりました。
04-Invisible Palette(作曲:篠田元一)
もともとライブで演奏してきたジャズ曲だったのですが、メロディ・ラインとハーモニーを突き詰めたら現代曲的な曲に発展しました。ゆったりとした弦のハーモニーの流れにピアノが絡みつき、異次元的な世界を作っていきます。チェロの低域のラインに乗る飛鳥のソロは最小の音数ながら完全に“泣”いています。また、その後のピアノ・ソロは多層的なハーモニーでアプローチしたのですが、これがうまくハマりました。個人的にも好きな曲です。
05-Vari Dance(作曲:篠田元一)
バルトークをはじめとする現代クラシックの分野は、僕の憧れでもあり、いつかはそんな音を実現してみたい、と思っていました。スコアをじっくり書いたので時間がかかりましたが、こうして出来上がった音を聴いてみると、予想以上に“自分らしさ”も出せたと思っています。ピアノとストリングスの緊迫したアンサンブルがお楽しみいただけるでしょう。ちなみにピアノとバイオリンのユニゾン・フレーズは実はFのブルーノートを弾いてるのが分かりますか?その下にはまったく異なる調性が展開されています。アドリブもみんな完全フリーな気分で楽しんでいます。
06-亡き王女のためのパヴァーヌ
この曲は、ラベルの作品のなかでも、もっとも親しみやすい曲でしょう。アレンジを行うにあたり、オリジナルのピアノ譜や管弦スコアなどをいろいろ研究し、最初は“誰も聴いたことのないようなパヴァーヌ”を目指していたのですが、アレンジを幾重と突き詰めていくうちに、気が付くとオリジナルの方向に自然と引き戻されていました。名曲とはそういうものなのでしょうか。ただ、僕がピアノを弾くと、やはりクラシックとは違った肌触りになってしまいますが(笑)。
07-エメラルドの波紋~Next Story(作曲:篠田元一)
この曲は、1stアルバムの『PIVOT』に収録したピアノ・ソロ曲をもとに、新たな展開を加えつつ、ピアノと弦で曲のイメージを大きく膨らませました。これもかなり先鋭的なハーモニーを使った全編、現代曲風の作品です。この曲は以下のようなストーリー仕立てになっています。情景を思い描きながら聴いてもらうのも楽しいでしょう。
ある少年が生い茂った森に迷い込んで、ひたすら歩いていると、小さな湖にたどり着いた。
あたりは、とてもひんやりしていて、静まりかえっている。
ほんの少し霧がかかって、なんだか不思議な空気がただよう湖……。
少年はそっと水鏡に自分を映してみる。
水は澄みきっていた。一点のくもりもなく、水面にはもう一人の自分がいた。
その澄みきった水面の美しさに魅せられて、思わず、指先を水面に触れさせてみた。
触れた瞬間、水の波紋が広がり、水のそこから、まばゆい光が子供を照らした。
静まりかえっていたその湖はざわめきはじめる。
木々が揺れ、風が吹いてくる。
少年は少しとまどいながら、水の中をのぞいてみると、
光の奥から小さな妖精がたくさんでてきた。
小さな妖精は次々と水の外に出てきて、子供を取り囲んでいった….。
08-One Night(作曲:篠田元一)
ピアノと弦でお洒落なジャズをやってみよう、ということで書いた曲です。イメージとしては、「ある女性が、ひとり場末のバーで昔の彼氏への回想を巡らす」という感じでしょうか(笑)。でも、何より未来や温かい気持ちを伝えたい曲です。
メロディアスな中にもピアノと弦楽四重奏の対位法的な絡みを練り込んでいるので、その辺もぜひ注目して聴いてみてください。
09-Marshmallow Pillow(作曲:篠田元一)
篠田、飛鳥によるデュオ曲です。この曲は、最初にウチのスタジオで二人セッションをしたときに演奏した曲という点からも、とても思い入れがあります。最初にセッションをした雰囲気をそのまま踏襲する気持ちでレコーディングしました。“晴天の公園で、芝生を枕(Pillow)に、空を見上げたら、マシュマロ(Marshmallow)のようなふわふわした雲が泳いでいる….そんなイメージのシンプルな小曲ですが、これもやさしさや温かさを伝えたい曲です。
10-エイプリルフール(作曲:バート・バカラック)
バート・バカラックのカバーで、唯一、ピアノ、スティールパン、ギター、ベース、ドラムによる別編成で演奏されます。この曲は“とびっきりのデザート”といった感じでしょうか。
とてもポップ&メロディアスで、大好きな曲なのですが、アルバムの中で他曲とのバランスを考えて、浮いてしまわないよう、実内楽的なムードを残してアレンジしました。いつもライブなどで一緒に演奏してきたメンバーとのレコーディングだったので、リラックス・ムードのホットな音に仕上がったと思います。