冨田 勲 源氏物語十二支

源氏物語 十二支

ステージ

2005年3月24日、愛知万博「愛・地球博」の前夜祭セレモニーとして、冨田勲先生による「交響絵巻 源氏物語十二支」コンサートが愛知県立芸術劇場大ホールにて行われました。冨田先生の「源氏物語」といえば、1998~1999年にかけて行われた国内外のコンサートをはじめ、ライブ版、スタジオ版ともにCD化もされていますが、今回は冨田先生ご自身、万博のために大きな改訂が行われ、新たなテーマを加えた90分の長編作品にスケールアップされています。

楽曲的には、従前の源氏物語シリーズ同様、フル・オーケストラと邦楽楽器の共演を基調としていますが、冨田先生のことですから、シンセにハイライトが当たる部分も多く、文字通り壮大なシンフォニーに仕上がっています。今回のコンサートも、昨夏からお声をかけていただき、冨田先生のこのコンサートにかける意気込みはかなり高いものでした。シンセのサウンドは従前同様に8chによるサラウンド処理して鳴らしています。そこには冨田先生ならではの種々の工夫が施され、独自の世界観が表現されています。

今回はオーケストラは地元の名門、名古屋フィルハーモニー交響楽団、日本を代表する5人の邦楽の名手、朗読に高橋恵子さんが加わるという超豪華なキャスト。構成・演出は伊豫田静弘氏、舞踊振り付けは西川右近氏という高名なスタッフでステージは豪華絢爛です。こんなすごい方々とお仕事ができたのはとても光栄であります。

自分自身、とても責任の重い仕事でしたが、本番のステージは無事に大成功でした。リハの段階まではシンセのサラウンド処理などいくつか不安を残していたのですが、本番ではすべてうまくいき、演奏者も高い集中力でパーフェクトな内容だったと思います。高橋恵子さんの朗読も感動的で、冨田先生、出演者、スタッフもみんな高い達成感を得ていたようです。本当に充実したすばらしいコンサートでした。

なお、このステージの模様はNHKのBS-Hiで放映(下表参照)が予定されています。ぜひご覧になってください。

交響絵巻 源氏物語十二支(冨田勲 作曲)

日時
平成17年3月24日(木)
開場/午後5:30 開演/6:15
会場
愛知県芸術劇場 大ホール
主催
愛・地球博」前夜祭実行委員会、NHK名古屋放送局
出演
作曲・指揮:冨田勲
朗読:高橋惠子
管弦楽: 名古屋フィルハーモニー交響楽団
篳篥: 稲葉明徳
琵琶: 坂田美子
笛: 西川浩平
筝: 野坂惠子
笙: 宮田まゆみ
シンセサイザー: 篠田元一
スタッフ
演出・構成: 伊豫田静弘
振付: 西川右近
オーケストラアドバイザー: 岩村力
サラウンド制作協力: 湯川純郎(ローランド)
映像編集: 田嶋隆浩
ドレスデザイン: 下斗米雪子
その他大勢の方々……
TV放送
ハイビジョンスペシャル
「幻想交響絵巻コンサート~よみがえる源氏物語絵巻・千年の時空を超えて」
<BS-Hi>
4月10日(日)後4:30~6:00 (全国放送)
4月24日(日)前8:10~9:40(再)(全国放送)
ツーショット3/21の早朝より、シンセのサラウンド出力の最終調整が行われました。今回も機材面を含めて、シンセ系サウンドはローランドにサポートをお願いする運びになりました。場所はローランドの秋葉原地下スタジオです。冨田先生、ローランドスタッフ、PA音響関係者、冨田先生が普段お使いのNuendoサポートとしてスタインバーグ・ジャパンの山崎博史氏などが一同に顔を合わせました。
湯川純郎氏ローランド開発の文字通り“メインCPU”のお一人であります湯川純郎氏(執行役員 MI開発部長)です。当初は僕のシンセ周りだけをお願いしていたのですが、冨田先生といろいろ打ち合わせをしているうちに、サラウンド制作においてローランドのアイテムを駆使したアイディアとアプローチを頂く流れになりました。湯川さんには昔からお世話になりっぱなしで、前回の源氏物語でもサポートをいただいております。V-Synth XTの発表を間近に控えて超多忙な時期だったのですが、献身的なまでに細部にわたり完璧なサポートをいただきました。
ローランドからは他に松本氏と遠藤氏が同行サポートとして参加していただきました(後ほどご紹介)。
複雑なセットアップ冨田先生の要望で何が大変かといえば、8chサラウンドを何度かクロスして鳴らすという点であります。つまり、8chマルチの状態を片方をフェイド・アウトさせつつ、片方をフェイド・インさせるというもので、場所によっては3連クロスもあります。そのため、サンプラーのMV-8000を3台使い、Fantom-X6の鍵盤でトリガーして鳴らす方法がとられました。これには予想以上に大きなシステムが組まれました。もちろん、これらはシンセの手弾き演奏(Fantom-X8を使用)の合間に行うわけですから、ステージ上での緊張度はかなりのものです(笑)。
オーケストラの中での手弾き演奏も結構大変で、チェレスタ系、ベル系、パッド系、コーラス系などに加えて、冨田先生ご自身がこだわりを持ってサンプリングした「お寺の鐘の音」などを用意しました。音色に関してはFantom-X8用に今回も湯川さんに特製のエクスパンジョン・ボードを焼いていただきました。
今回のシステムの大まかなセッテングは下図のとおりです。本番ではこれにV-Synth XT(ボコーダーとして使用)が加わりました。
ダイアグラム
富田先生冨田先生は、このときもNuendoでサラウンド用の出力の最終調整をしています。冨田先生のここ数ヶ月は、僕が知る限りだけでも、超人的な忙しさでした。Nuendoとシンセだけによるデモ制作(ステージの演出用)、オーケストラ用のスコア書き、その合間にまったく別のお仕事(春の新番組の音楽制作など)、頻繁に行われる万博関係の取材や打ち合わせ、シンセのサラウンド作り…毎日行われるメールや電話のやりとりは、ほとんど24時間体勢モードでありました。この日も、冨田先生は徹夜明けのまま足をお運びの様子。早朝から仕込みが行われたのは、夕方から一足早く名古屋に向かうためです。本当に息つく間もありません。
リハーサル3/22は名古屋で全出演者を含めたリハーサルが行われました。場所は名古屋フィルの練習場であります名古屋市音楽プラザです。初の音合わせにも関わらず、名フィルの方々の演奏の高さには本当に驚きました。リハーサルはとても順調で予定時刻よりも1時間早く終わりました。邦楽器の方々もとてもすばらしい演奏です。笛の西川浩平さんと筝の野坂惠子さんは従前の源氏コンサートでもご一緒させていただき久々の再会となりました。高橋恵子さんとはすでに打ち合わせでお会いしていたし、名古屋に向かう新幹線が偶然にも同じ車両だったこともあって、極度の緊張もせずお話させていただくことができました。本当に美しく、しっとりとした穏やかな方です。
懇親会3/22の晩は、主催のNHK名古屋から懇親会のお誘いをいただきました。冨田先生、高橋恵子さん、演奏者、NHK名古屋上層部の方々です。今回、総合プロデュース的な役割を果たしたの一番左後方の事業部の岡本伸三さんです。若干30才、入社8年目にして本当に隅々まで気が付く見事な仕切りぶりでした。今回のプロジェクトは彼の役割も大きかったといっても過言ではありません、個人的にもとても親しくさせていただき、今後も何かご一緒できる機会があればと願っております。
ツーショット仕込みの段階からリハ、本番とすべて篠田とともに同行していただきましたローランドの開発プロデューサーのお二人です。左が松本洋明氏(Fantom-Xの製品開発責任者)、右が遠藤彰氏(Rolandシンセのサウンドデザイナー責任者)。湯川氏を含めて、これ以上の最強サポート体勢はありません。まさに「鬼に金棒」であります。実際、このプロジェクトのために、本当にローランドの開発は数週間は停滞してしまうのでは、と心配しておりました。心よりお礼を申し上げます。呑み会やリハの合間でのシンセ談義はとても楽しく有意義なものでした。こんなすばらしい方々とクリエイティブなお仕事ができて本当に幸せです。
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