22年ぶりの再会

ジョー・サンプル1 先日、キーボード・マガジンからインタビュアーのお話をいただきました。そして、そのお相手はといえば、ジャズ・ピアニスト界の重鎮・巨匠でありますジョー・サンプル氏であります。
 実は、ジョー氏とは86年春頃、やはりキーボード・マガジンのインタビュアーを務めさせてもらった経緯があり(当時のスナップ)、今回で2回目となりました。考えてみれば、22年以上ぶり!の再会であります。最初のインタビューのことなどは、若輩モノの僕のことなど覚えているはずもないだろうし、そのときは僕も緊張しまくりだったし、ジョー氏も牧師のような物静かな印象が残っているので、今回はどういう切り口でインタビューに臨もうか、いろいろ頭を悩ませていました。とりあえず、最初にコワイ顔されなかったら、持参した当時のインタビュー時の写真を見せてしまおうと目論んだのが正解(笑)。これがジョー氏もえらく懐かしくウケてもらい、一挙に和やかな雰囲気ままインタビューに入れました。よかったよかった~。
 さて、今回の来日は、コンサートやライブ目的ではなく、女性ボーカルのランディ・クロフォードとのコラボレーション・アルバムの新作『ノー・リグレッツ』のプロモーションのためのものでした。インタビューもレーベルであるビデオアーツ・ミュージックのオフィスをお借りしています。写真のご協力もいただきました。
 ジョー・サンプル2
 ジョー・サンプル&ランディ・クロフォード名義のアルバムでは前作『フィーリング・グッド』がセールス的にも成功を収め、僕も愛聴盤の1枚なのですが、今回の2年ぶりの新作『ノー・リグレッツ』も予想以上に本当にすばらしい! 疲れきった深夜なんかに聴いても、じんわりと浸れるなかなか質感の高いアルバムです。ランディはクルセイダーズ『STREET LIFE』から、もともと大好きなシンガーですが、それに加えてジョー氏のピアノ・プレイは長いキャリアの中でも、今までで一番リラックスして弾いているように思えます。この点を聞いてみると、<最初のソロ・アルバム『虹の楽園』からすれば30年も経ってるからね>、という軽い笑みを浮かべて言葉を選びながら優しく答えてくれるあたり、何かとても深いものが伝わってきます。22年前のジョー氏のやや神経質な印象はまったくなく、終始上機嫌で、どんな質問にも体を大きく使って答えてくれました。たっぷりいろいろなお話を伺うことができましたが、このときのインタビュー記事は12/10発売のキーボード・マガジンに掲載されますので、お楽しみに。

 僕自身、学生時代はチック・コリアやハービー・ハンコックと同じくらいジョー氏のコピーにとことん明け暮れていました。そんなジョー氏を目の前にしていると、僕も歳を重ねたせいか、憧れや緊張というよりも「ジョー氏は今までどんな気持ちでまっすぐに音楽をしてきたんだろう」という面に興味を抱き、そしてどんどん引き込まれていきます。現在でもとどまることのない音楽への探求心や一線で活躍するバイタリティには脱帽ですが、それに加えて音楽、演奏面のすばらしさ、大きさ、広がり、優しさは、やはり「その人そのもの」であることを再認識させられます。
 とにかく、僕自身にとっても今回のインタビューはとても感慨深いものでした。22年ぶりといっても、旧友や同窓生、昔の仕事仲間との再会という話ではなく、自分が若輩モノの駈け出しのときにご対面させてもらったジョー・サンプルなんです。この22年間のことを思うと、僕も音楽だけでなく、いろんな物事に対する考え方も多少なりとも変わったんだろうけど、ここから更に22年、ジョー氏のような情熱と優しさを保ちながら音楽を続けていられたら、とても幸せなことだし、それを僕も願ってやみません。

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