第3回: 松武秀樹 氏

ツーショット

ゲスト名

松武秀樹 氏 <現JSPA (シンセサイザー・プログラマー協会) 会長>

ゲストの方のご紹介

松武秀樹さんといえば、古くはYMO(細野晴臣・坂本龍一・高橋幸宏)のバックで白衣の衣装をまとい、縦横無尽に巨大なシンセを操っている人というイメージを持つ人も多いでしょう。その後も、 作・編曲・プロデュース・シンセサイザー・プログラマーとして活動し、数々の伝説的なレコーディングに参加してきているのはみなさんもよくご存知のことと思います。また、自己のユニット「Logic System 」を結成し、現在までに6枚のアルバム(内2枚は世界8ヶ国で発売)を発表しています。
松武さんはアーティスト/ミュージシャンとしての活動に留まらず、日本シンセサイザー・プログラマー協会(会長 冨田勲)の副会長として、芸団協への参入、シンセサイザー・プログラマーの立場の向上(実演家としての認定)、著作権の保護など、多大な功績を残しています。その他、インターネット音楽配信会社のミュージック・シーオー・ジェーピー(music.co.jp)の取締役も務め、新たなメディアでの音楽の可能性を追求しています。
とにかく、松武さんのアクティブな活動、そして輝かしい実績の数々は、松武さんのWebサイトで知ることができるでしょう。

どんな間柄?

僕も日本シンセサイザー・プログラマー協会に所属しているので、会合や楽器メーカーとの懇談会、イベントなどで、よくご一緒させてもらっております。

この雑談のきっかけ

現在、松武さんと一緒に、マル秘のプロジェクトがいくつか進行中でして、その打ち合わせのためにわざわざモトミュ-ジックまでお越し頂きました。当日は美しい奥さまとカワイイお嬢さんも一緒です。

雑談場所/日時

場所:モトミュ-ジック事務所内
日時:98年5月16日 14~18時

ワン・ショット雑談

篠田 篠田
今日は、お忙しいところ、わざわざお越し頂きまして。
松武 松武
前から一度、篠田くんのところに遊びに行こうと思ってたんだよ。
篠田 篠田
いざ、松武さんが来るとなると緊張しますね(笑)。そのせいか松武さんが甘い物ダメってわかってたんだけど、緊張のあまりケーキ買いに行っちゃいましたよ(笑)。久々に自転車乗って(笑)。コーヒーも買い貯めがあるのに買いに行っちゃたりして(笑)。
松武 松武
そんなに気を使わないでよ。僕は酒飲みだからなぁ(笑)。美香(お嬢さん)はケーキが好きだから喜ぶよ。
美香ちゃん
これが美香ちゃん。カワイイですね。
篠田 篠田
そういえば、昔、松武さんに飲みに連れてってもらって、おもしろいことがありましたよ。
松武 松武
何だっけ。
篠田 篠田
松武さんは、そばアレルギーでそばを食べられないのに、なぜか下北沢のそば屋の飲み屋に連れてってもらいました。絶対あそこがいいって(笑)。
松武 松武
ははは。そうなのよ。オレ、そばは全然ダメだけど、あの店、日本酒のいいのがたくさんあるからね。
篠田 篠田
あ、そうだったんだ。じゃぁ、またあのそば屋さんに連れてってくださいね。
松武 松武
えっ、あ……うん(笑)。まぁ酒もいいけど、横浜の中華街はウチから近いし、いい店いくつか絞り込んでるから、今度は篠田くんも遊びにおいでよ。
篠田 篠田
ありがとうございます。今度はそばじゃなくてラーメンですね(笑)。
松武 松武
今日は篠田くんのスタジオを見るのも目的だったんだ。
篠田 篠田
いつも松武さんが使っているようなスタジオから見れば、大したことはありませんよ。でも、ウチのコントロール・ルームじゃ、松武さんの機材は全部入りきらない(笑)。
松武 松武
昔から使っているシンセもいまだに現役だからね。
篠田 篠田
前々から興味あったんですけど、あの“タンス”っていつ見てもスゴイですね。

タンス

松武さんといえば、やはりこのタンス(Emuシステムのアナログ・シンセ)を見落とせないでしょう。ご存知かとは思いますが、タンスとは、引き出しからいろんな物を出すように、このシンセから多彩な音を次々出せるところから松武さん自身がネーミングしたものです。

松武 松武
あれねえ、壊れないんだよ不思議と。毎日拝んでるからかな(笑)
篠田 篠田
ひょっとして、中身開けたら全部デジタルだったりして(笑)。
松武 松武
ははは。でもね。この音を使いたいからといってサンプリングしてもダメなのね。やっぱりアナログはアナログのままでないと。それにデジタルじゃ同時に2つ以上の作業ができないし。
篠田 篠田
そのへんの感覚というか操作性はやっぱり断然アナログですよね。
松武 松武
篠田くんもアナログ・シンセを触ってきた世代だからわかるだろうけど、例えば、デジタル・シンセじゃフィルターいじりながらLFOなんてできないよね。ここが決定的だよね。もちろん、デジタルはデジタルのいい部分も多いけど。篠田くんのスタジオにも新旧いろんなシンセあるね。
篠田 篠田
アナログっていうと、たまにミニムーグを鳴らすくらいなんですけど、実際鳴らすとやっぱりめちゃくちゃ良い音がしますね。ホント、シビれます。でも、電源入れてピッチが安定するまでに何時間もかかるし、ベンダーを動かすと、すぐピッチ狂ってしまうもんで……。クライアントがいるときや、ライブでは使えない状態です。そうそう、ミニムーグといえば、昔、某バックバンドをやっているとき大阪の阿倍野プールの特設ステージでファンが押し寄せて、プールにムーグが沈んだこともありましたよ(笑)。もちろん、全部直してもらったんだけど、あれ以来どうも調子が悪い。当たり前か(笑)。タンスはメンテという面ではどうなんですか。
松武 松武
いつもスタジオに持ち歩いてるけど、全然大丈夫だよね。即使えるよ。やっぱり毎日拝んでるのがいいんでしょ(笑)。もちろんメンテでは今まで結構お金かかってるけどね。やっぱりアナログってきちんとメンテしてあげれば、昔の車がピカピカによみがえるのと同じようになるよ。電源回りとか内部のワイヤリングも磨きをかけてね。
篠田 篠田
大事なのはそこですよね。その点、今のデジタル・シンセはそこまでの愛着が持てないのが問題だなぁ(笑)。タンスはモノ・シンセでしたっけ?
松武 松武
オシレーター分だけあるから一応8ボイス。でもまあ使っても2ボイスか3ボイスくらいかなあ。
篠田 篠田
普段耳にしている最新のヒット曲の数々で、あのタンスがバリバリと元気に鳴っていることを考えると、やっぱりスゴイですよね。
松武 松武
あのね、DX7とかのデジタル・シンセが出たときは、別に抵抗がなくて、便利になったと自分で判断していたよ。中身の F0 だのなんだのはとりあえず無視。よくわからんから。あんなの覚えたところで(笑)。それで、MIDIコントロールの、いままでアナログでやっていたところの番号とかは、どういうふうに対応したのかは勉強したよね。127段階になったとか。数字的なことで抵抗あったけどね。で、僕の場合はアナログもデジタルも、2ついっぺんに使い分けてやってきたから、デジタルに挫折してまたアナログに戻るというのはなかったな。
篠田 篠田
いつも松武さんがトップ・レベルにいられるのは、そのへんの柔軟な姿勢なんでしょうね。あ、最後にYMO時代のことも聞いてもいいですか?
松武 松武
どうぞ何なりと。
篠田 篠田
個人的には松武さんというと、昔、「夜のヒットスタジオ」の中で放映されたYMOのアメリカでのライブ中継がやけに印象強いんですよ。
松武 松武
いやーYMO時代は、確かに画期的なことや実験的なことをしてきたとは思うんだけど、ステージで動かすシーケンサーが当時はMC-4とかMC-8でしょ(笑)。いろんなトラブルがあったよね(笑)。
篠田 篠田
どんなトラブルが一番強烈でした(笑)。
松武 松武
ステージでデータをロードしても全然読めなかったり、暴走して全部の楽器がいっぺんに演奏しちゃったり、確か「ビハインド・ザ・マスク」だったと思うだけど、まだ誰もはじめてないのに途中で終わっちゃったりして(笑)。まぁ、このへんは話したらキリがないなぁ。
篠田 篠田
なかなか興味あるお話ですね(笑)。
松武 松武
このコーナー、しばらくたったらまたやろう。キリがなさそうだ(笑)。
篠田 篠田
そうですね。また登場してください。貴重なお話いろいろありがとうございました。
松武 松武
さて、じゃぁ、そろそろ本題の打ち合わせに入りましょうか。

雑談を終えて

松武さんとのおつき合いは、かれこれ10年近くなるのですが、今までは大先輩というイメージがあって、なかなか深いお話をする機会がありませんでした。でも、実際何度かご一緒させてもらうと、全然屈託ないし、楽しいお話を一杯聞かせてくれます。YMO関係やいろんなアイドルのレコーディングでの秘話など楽しさ満杯です(笑)。
前述したように、松武さんとは現在、いくつかのプロジェクトをご一緒させてもらっております。内容は具体化したら公表しますのでお楽しみに!
今度の松武さんとのTha’s DAN!!は横浜中華街でをやるかもしれませんよ(笑)。

オマケのスナップ

WESTSIDE Studioにて
WESTSIDE Studioにて
松武さんがスタジオでよく使うシンセ/サンプラー群。これ以外にもラックがいくつか積み上げられています。背面には例のタンスがあります。それにしても、これじゃ前のミキサーの人が見えません(笑)。
松武さんがスタジオでよく使うシンセ/サンプラー群。これ以外にもラックがいくつか積み上げられています。背面には例のタンスがあります。それにしても、これじゃ前のミキサーの人が見えません(笑)。
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