第7回: 三柴 理 氏

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篠田 篠田
今、三柴さんのキーボード・マガジンの連載ってどのくらいやってるんでしたっけ?もうかなり長いですよね。
三柴 三柴
次が50回くらいですかね。篠田さんは13年以上ですよね?
篠田 篠田
(笑) 確か130~140回かな。もう覚えてませんよ(笑)
三柴 三柴
担当編集者が15人変わったって書いてありましたよね(笑)。すごいですね。
篠田 篠田
当時はキーボードマガジンに新入社員が入ると僕の担当になるんですよ。最初の頃は原稿用紙に手書きだったから、まだペンダコの跡がありますよ。三柴さんもそれを超えるくらいがんばってください。
三柴 三柴
いや~今後も篠田さんの連載記録は不動でしょう(笑)。
篠田 篠田
ところで、三柴さんのことを知ったのは、かなり昔なんだけど……深夜のテレビでよく見かけていました。
三柴 三柴
それって多分、筋肉少女帯の頃ですね。筋肉少女帯は20歳くらいからやりはじめたんだけど、インディーズの時代が長いんですよ。それで、メジャーと契約して2枚アルバムを出したところで辞めました。たぶん15年くらい前だったと思うんですけど。
篠田 篠田
そんな前になるんだ。三柴さんもキャリア長いですね。
三柴 三柴
僕は篠田さんのことは、キーボード・マガジンなんかでもずっと知ってましたけど、実際の演奏を聴いたのは大楽器祭のステージだったかな。
篠田 篠田
それは『PIVOT』をリリースしたときで、2000年の春頃かな。そういえば、三柴さんが来てたと誰かが言ってました。
三柴 三柴
僕は大楽器祭とか楽器フェアにはピアノをよく見に行くんですよ。そしたら篠田さんがライブをやるという告知を見て。篠田さんのプレイがすごくて、びっくりして。フレーズがどんどん出てくるし。ミスタッチもほとんどないし、ミスターパーフェクトだなっと思って。僕は日本のジョー・ザビヌルだって思いましたね。日本にもこういう人がいるんだって思いました。
篠田 篠田
とんでもない。今でもミスしまくりだし(笑)。今でも指が骨折しそうなフレーズを自分で書いてて墓穴を掘ってる(笑)。でも、三柴さんにそう言われて光栄極まりないです。僕達の世代だと、多くの偉大なキーボーディストがリアルタイムで脚光を浴びていた時代だから、ウェザーリポートのザビヌルもそうだけど、チック・コリア、ハービー・ハンコック、ジョージ・デュークなど、みんなアイドルなんですよね。
三柴 三柴
今ってそういうちゃんとした下地がある人があんまり若い人でいないんですよね。
篠田 篠田
まぁ僕もクラシックの下地がないに等しいから大きいことが言えないです。すごいコンプレックスあるんですよ。ちゃんと譜面どおりに弾くことに入魂するよりも、アドリブとか弾いている方がいい、みたいなことしか長年考えてなかったから。だから、今、ちゃんとしたことをやるのに苦労してるし、三柴さんのようにピアノを極めている人にものすごい憧れもあります。ピアノは一日どのくらい練習してるんですか?
三柴 三柴
時間はそんなにやってないです。昔はそれこそすごい練習してましたけど。今は左手だけの指練習だけで1時間やって、後はバッハの平均律をやりますね。バッハは単純に好きというのもありますし。それを1時間ほどやってから、後は自由に自分の好きな曲をやったり。
篠田 篠田
すごい。その頭の2時間がイントロダクションになるわけですか。
三柴 三柴
ええ、それはもうやらなきゃ始まらないという感じで。
篠田 篠田
こりゃ、見習わなきゃいけないなぁ(笑) 自分は練習嫌いなんで(笑)
三柴 三柴
僕は昔から“茨の道”で、本当に泣きながら練習したという感じで(笑)。たとえばフレーズを10回練習して、10回成功したら次に進むという感じで練習してました(笑)。だから9回目でまちがえちゃうと、もう先に進んでしまえばいいのに、「うぇーん」とか泣きながらはじめからやり直したり(笑)。
篠田 篠田
すごい忍耐力!ちゃんとやらないと気が済まないんですね。
三柴 三柴
やりますね。練習好きですから。だから今でもメトロノームとか置いて練習するんです。左手だけの練習曲を無心にやったり。練習しないとなんか罪なように感じてしまったり、ミスタッチをすると罪みたいな感じがあったり。
篠田 篠田
何となくわかるけど(笑)。自分も一番練習していた若い頃は、友達と旅行に行ってて5日も鍵盤触らないと不安で、先に帰ってしまったこともあったけど(笑)。三柴さんは生涯そんな感じなのでしょうね。
三柴 三柴
音楽をやることがすごく楽しいし、練習も好きでして(笑)。
篠田 篠田
子供の頃からずっとですか。その辺の話も聞きたい(笑)。
三柴 三柴
えっと、僕が初めて買ったレコードがデイブ・グルーシンの「モンタージュ」という曲が入ったアルバムなんですよ。それと、「燃えよドラゴン」とかのブルース・リーのテーマ曲とかが全部入ってるようなレコードの2枚だったんです。その2枚がすごく好きでいつも聴いてて、ちょっとマネして弾いてたんです。すると、ある日、母親に「クラシックの先生に習っているのに、不良になっちゃいますよ」って言われて、そのレコードを隠されちゃったんです(笑)
篠田 篠田
教育ママだったんですか?(笑)

三柴 理氏

三柴 三柴
そういう訳ではないんですが、まじめな母親でして。ドラムで「ドッタン、ドッタン」って入っているだけで、ちょっと不良みたいな。小学校~高学年だったんですけど、すっごくカッコいいな~と思って聴いてたんだけど隠されちゃって。とにかくオーケストラだけ聴いてました。
で、普通だったら「もうクラシックはキライだ~」って事になるんですけど、素直にオーケストラにのめり込んじゃったんですよ。それで、曲はもうほとんどオーケストラ以外聴かなくなっちゃったんですね。中学になってからは、レオポルド・ストコフスキーという指揮者が好きになって、お小遣いとかで、その人のレコードをどんどん集めだして。それで高校になってもずっと集めてて管弦楽曲とかオーケストラ曲ばっかり聴いてて。
高校時代って、ロックは文化祭とかでみんなやるじゃないですか。でも、それがすごくイヤで、ディープパープルとかも全然聴かなかった。そんな感じできてしまったわけですが、18歳の時に初めてバンドを組んで、自分の曲をやったらすごく気持ちが良かったんで、それでピアノ・トリオを組んだわけです。僕はボーカルもやるんで歌いながらピアノ弾いてたんですよ。
篠田 篠田
それはロックバンド?
三柴 三柴
ん~、ロック……だと自分たちでは思ってたんですけど。ドラムの人はドラムの人で、ドラムが何たるかというのも全然しらなくて。ベースの人だけちょっとロックを知ってて。ドラムの人なんて、頭に「チー」しかなくて次に「ドン」と「タン」が一緒に入っちゃって「チー、ダン、チー、ダン」としか叩けなくて(笑)。全部一緒に動いちゃうんですよ(笑)
篠田 篠田
そりゃ、ある意味斬新だけど(笑)
三柴 三柴
だから僕は普通の8ビートとかよく知らない人で、キース・エマーソンのナイスみたいに、ずーっと弾きまくってて、難しいのを弾きながら「ホォ~」とかってオペラみたいに歌ってるような、そんななんか変なバンドでしたね。バンド形態だけど、たぶんロックではないみたいな。
篠田 篠田
それも一種のプログレなんでしょう(笑)
三柴 三柴
でも、プログレとか当時は聴いたことなかったから。それで、当時、大槻ケンヂ君が筋肉少女帯っていうバンドをやってて、ライブで対バンで一緒になって「なんか変なピアニストがいる~」みたいな話になって(笑)
篠田 篠田
大槻さんは、かなりインパクトを受けたんでしょうね。
三柴 三柴
しかも、僕のルックスがすごく老けてて(笑) 「あ~、あれは学校の先生がシャレでやってるに違いない」とかって思ったらしんですよ。でも、大槻君と同じような歳だったんで「あれ~」みたいなことになって(笑)。それで結局、筋肉少女帯に入ったんですよ。でもその後、ビートルズとかストーンズとかツェッペリンとか聴かされずに、マーク・スチュワートとか、あとパンクとか、プログレとかそういうのを聴かされたんですよ。だから、ちゃんとしたロックの基礎というか、ロックなんたるかとか、そういうのは、経験してないんです(笑)。
篠田 篠田
三柴さんのソロ・ピアノは、繊細だし、力強いし、とても魅力的ですけど、その一方で「特撮」なんかでロックを演奏しているプレイを聴くと、ちょっとプログレ的な影響も感じたのは、その辺がルーツなんですね。
三柴 三柴
筋肉少女帯に入ったとき、プログレ大好きなベースがいて、そこで聴かされたんですよ。フランク・ザッパとかもそうなんだけど。
篠田 篠田
そうか、ザッパね。何となくそんな雰囲気感じます(笑)。
三柴 三柴
ステージアクションはザッパのキーボーディストをすごく参考にしてるんですよ(笑)。とにかく当時はロックだと思ってやってたんですけど、リフとかいう概念もなければ、エレキギターもいないみたいなバンドだったんですよ(笑)
篠田 篠田
EL&Pの影響とかも受けました?
三柴 三柴
いえ、まだその頃は聴いてないですよ。筋肉少女帯に入ってから聴かされましたが。「三柴君みたいなバンドいるよ」って言われて、「え!あ、本当だ。くやしい」とか言って(笑)
篠田 篠田
この前のローランドのイベント・ステージでのキーボード・トリオもすごかったなぁ。
三柴 三柴
というか、ずっと現代音楽を聴いていたので、ロックというよりは現代音楽的なアプローチとして捉えてるんですよね。僕的には変拍子とかそういうのは大丈夫なんですけど、逆にポップが難しいんですよ。ポップであればあるほどポップなアプローチが苦手で、いつも無駄な左手が動いていたり(笑)。
篠田 篠田
トリオを好むのはギターとぶつかったりするからですか?
三柴 三柴
昔から、目立ちたがり屋だったんですよ。とにかく自分が目立ちたいという感じで(笑)。今、やってますけど、エレキギターが基本的にダメですね。
篠田 篠田
僕もそれはわかります。ギターに助けられることって結構ありますが、リズムもコードもぶつかりやすいですよね。でも、うまいギタリストだと、不完全コードとか巧みに使って、うまく共存できますけど。
三柴 三柴
僕はすっごくうまい人か、すっごくヤバイ人じゃないと合わないですね。横関敦さんという方が、多分、世界でもトップクラスの速弾きギタリストだと思うんですけど、僕と同じくらい早いフレーズを全部コピーして弾けるんですよ。そうするとすごく楽しいんですね。ものすごい速いハモリ・フレーズをやるとか。逆にソロがまったくできなくて“ガー~”っていうデスメタルの音しかでないとかいう人とか。そういう人だとすごく合うんですよ。ある程度うまいギタリストという感じだと、カブっちゃいますね。

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