第7回: 三柴 理 氏

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ツーショット

篠田 篠田
三柴さんとは、僕とそんなに歳は離れてないけど、聴いてきた音楽とかは微妙に違いますよね。ロックというよりはジャズの方向には目がいかなかったんですか。
三柴 三柴
自分でもすごくそういう風になりたくて、いろいろ聴いてたんですけど、ジャズとかも知らずに即興をどんどんやってました。でもジャズというよりは、ものすごい悲しい曲だったり。どちらかと言えばクラシックの即興みたいなのはやってたんですよ。
篠田 篠田
そういった即興の中に、ロックの過激なビートとかは、すんなり入り込めましたか。
三柴 三柴
ええ、だってリズムはタテ割りですから。クラシックと一緒ですから(笑)
篠田 篠田
ジャズの“チンチキ、チンチキ”というのは?
三柴 三柴
多分、横ノリがないんですよ。ただ、ある日、ドクトル梅津さんからセッションの誘いを受けて、いきなり梅津さんのライブに入れられちゃったことがあるんですよ(笑)。もう、すごい困っちゃって、案の定、全然ノリが合わないんですよ。そしたら、ドラムの方がすごくいい人で「あぁ、こいつ駄目だな」とかって思ったらしくて、「チッタン、チッタン」って叩いてくれたんですよ。そしたらすごくノリ良くなっちゃって、「あぁどうもありがとうございます」って感じでした(笑)。
篠田 篠田
僕の場合は若い頃は、「もうこれはできないなぁ」ってことになると、違った方向に考えるタイプだったんだよね。クラシックの勉強とかは、僕には窮屈でつまらないものだったんだよね。
三柴 三柴
和声とか本気でやったら絶対つまらないですよね。だってあんなのいらないですしね。結局は(笑)。
篠田 篠田
ここ数年、クラシックのこともちゃんとやろうと勉強を少しはじめたんだけど、模索しているうちに、ジャズとクラシックって、ロジカルな面ではあまり変わらないって思ったら、少し楽になってきた面もあるんだけど(笑)。
三柴 三柴
英語とドイツ語の違いのようなものを見た、みたいな(笑)
篠田 篠田
クラシックっていっても、フランス系って感覚的にジャズに近いじゃないですか。ドビュッシーとかラヴェルとかは、ちゃんと弾けないんだけど(笑)
三柴 三柴
僕のピアノの先生がフランス系の人だったので、一杯弾かされて当時はイヤになってしまったけど、今思うと感謝しているんです(笑)。
篠田 篠田
三柴さんのピアノってドビュッシーの影響感じるし、『Pianism』では「沈める寺」なんて結構マニアックな曲もすごい繊細に弾いてますしね。
三柴 三柴
あの曲、取り上げている人は少ないでしょ。でも実は、自分のアルバムでも、ドビュッシーの「月の光」や、ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」をやろうとしてたんですよ。それで当時、キーボード・マガジンの編集長だった三好聡さんに曲の話をしたら、「その2曲とも篠田さん、今度のアルバムでやってますよ」って言われて。だからやめたんです。とても悔しかったけど(笑)。
篠田 篠田
僕のはソロ・ピアノでなく、ピアノ+弦カルなんですけど。あの2曲はどうしてもハズせなかったです(笑)。探求心そそられる曲ですから。あ、そうなんですね、僕のアルバムも三好さんがライナーノートを書いてくれたから、僕と三柴さんは三好さんつながりでもあるんですね。
三柴 三柴
そうなんですよ。偶然なんですけど。

ツーショット

篠田 篠田
ラヴェルのパヴァーヌなんかは、メジャー・セブンスが使われているじゃないですか。この時点で馴染みやすい(笑)。それとドミナントの9thが平行進行したり、解決しない9th、13thのテンション・コードがあったり、さらにはF(onG)みたいなフュージョン・タイプの分数コードが出てきたり、って感じで、この分数コードってハービー・ハンコックの「処女航海」が最初じゃなかったのね、みたいな感じでのめり込んだんですよ(笑)。
三柴 三柴
ベートーヴェンなら、7thまでですよね(笑)。そういう考え方で言うと、とてもおもしろいですね。それと、ラヴェルにしても、明らかにこの音はおかしい、ってあると思いません? ピアニストは、当時はもう神に逆らうヤツはないみたいな感じだったと思うんですけど。

三柴 理氏

篠田 篠田
パヴァーヌの例の場所ですね(といって弾いて示す)。僕はヘンだったので、逆らいました(笑)。それと、僕はフランス系というと、ピアノ曲なんか聴いていると、技巧的な面よりも、どちらかというと雰囲気を重視してしまうんです。
三柴 三柴
僕もそうですね。一時期、エリック・サティが流行ったじゃないですか。それで、みんなドバァーって感じでものすごい数の人がサティを出していたじゃないですか。その時期、ジャン・ジョエル・バルビエっていうフランスのおじいさんが弾いたのがあるんですが、その人のはすごく良いと思いましたね。それはもう本当にサティが好きという感じで。というか、サティの学者なんですね。サティを研究してる人で。ただ、演奏はつたないんですよね。弾き方とか。でも、すごく伝わってくるものがあるんですよ。
篠田 篠田
ピアノの表現って本当にコワイですよね。その人なりが如実に現れてくるし。そして鍵盤弾きは、歳をとるごとにピアノへ回帰してくる(笑)。シンセでもいろいろできるけど、ピアノは指のオーケストレーションでもあるし。
三柴 三柴
そうですね。ピアノの内声で動いてるひとつひとつの音が、フルートだったり、クラリネットであったり。
篠田 篠田
自分の音色でということになるとやっぱりピアノをしっかり練習しないとって事になりますよね。こりゃ、もっと練習しないといけないですね(笑)。ピアノ一本にかける三柴さんは、やっぱりすごいですね。
三柴 三柴
というか、僕の場合ピアノを取っちゃうとほんとに何もできないですから(笑)。体力もあまりないですし。
篠田 篠田
ところで、他にどのあたりのクラシックに興味を持ちましたか?
三柴 三柴
さっきも言ったように現代音楽とかすごい好きで、高校の時とかよく聴いてましたね。その頃は奇を狙ったものがいっぱい出てきた頃なんですが、僕はあまりジョン・ケージとかがイマイチ好きじゃなくて、シュトックハウゼンとかイタリアの図形楽譜みたいなのを書くシルヴァノ・ブソッティとか、そういった人の譜面集めて弾いたりしてましたね。

(ここで、しばらくお互いピアノの弾き合いになる。お互いのアルバムの収録曲などを弾き合いました。)

ピアノ

篠田 篠田
それにしても「大江戸捜査網のテーマ」をやるというのはユニーク(笑)。
三柴 三柴
これは中学時代に大好きになって。チャンバラってみんな演歌じゃないですか?でも、この曲だけバルトークに似ているものを感じたんですよ(笑)。カッコいいと思って、それからもいろんなところで弾きまくってたんですが、実はちょっとおもしろい話があるんです。
篠田 篠田
何ですか?(笑)

三柴 理氏

三柴 三柴
ある日、自宅にこの曲を作曲した玉木宏樹さんから電話がかかってきて、
「ワシは、玉木と言うんだが、君、ワシの曲を弾いてるんだってね?」
えぇ~!っとか思って、「本人ですか?」って驚いてしまい……。
「すいません。人のふんどしで相撲とるようなことしちゃって」って言ったら
「いやいや、どんどん弾いてくれたまえ」っていわれて(笑)
少したったらまた電話がかかってきたんですよ。
そしたら「今度ねぇ。私ねぇ。冗談音楽をコロムビアから出すことになったんだ」って電話がかかってきて、「ああ、冗談音楽ですか」って言ったら「その中に大江戸捜査網いれるから、ちょっと弾きにきてくれたまえ」とかっていわれて(笑)。それで行ったんですよ。で、ピアニストは既に玉木さんの知り合いの方がいらしてたんですが、僕は大江戸捜査網の人って事で呼ばれてその曲だけ演奏してきました。
篠田 篠田
三柴さんも、曲を書かれますよね。どういったプロセスで作曲をされるんですか?(笑)
三柴 三柴
小学校の頃から作曲の先生についてたんですよ。ピアノの先生とは別に。
篠田 篠田
小さい頃って、作曲はどんなことを習うんですか?(笑)
三柴 三柴
僕の適当に作曲した曲を手直ししてくれたりといった感じですね。最初に作った曲というのは小学生4年生の頃で、小組曲という曲で、動物たちを曲にしてみようという感じでした。選び方がすごいんですけど、1曲目がペンギン、2曲目がオオサンショウウオで、3曲目がチンパンジーで、4曲目がカバで、5曲目がネズミっていう曲なんですよ。それで、曲を見せに行くと「ここはこうしたほうが良いね」とかってのを教わるんですよ。
篠田 篠田
一定の理論を教わるというよりも、感覚的な面が大きかったのかな。
三柴 三柴
理論はもう少し大きくなってからですね。小学校5年生の時は「モンスーン」という曲を作ったんですけど、夏休みの自由研究だったんです。みんなが朝顔の観察とかのレポートを提出するときに、僕は曲を書いてたんですよ。もちろん、その時はコードの感覚とかまったくないわけで。
篠田 篠田
コードを根幹に置かない作曲という点では、クラシック的なアプローチですよね。右手メロディ、左手コードみたいな感覚はないわけですよね。
三柴 三柴
そうですね。大人になってから書き直しましたけどね。

(注:所持した三柴さんの作曲ノートにも、この幼年期に作曲した曲は新たに手を加えて記譜されていたのは驚きでした)

(注:所持した三柴さんの作曲ノートにも、この幼年期に作曲した曲は新たに手を加えて記譜されていたのは驚きでした)

篠田 篠田
現在の作曲方法とは大きく違わないのかな?
三柴 三柴
「森の妖精」という言う曲を例で言うと、まずメロディから思いついて、簡単なコードをつけて、それを徐々に変化させていって、よりクラシカルにしていくという感じでなんですけど……なかなかうまく言えない(笑)
篠田 篠田
内声の動きは非常に重視した感じになってますよね。その辺はクラシカルなピアノ曲になっていますよね。
三柴 三柴
そうですね、なんというかピアノを弾いていると出来上がるという感じとしか言いようがないですね(笑)。というかピアノしかできないので(笑)。
篠田 篠田
最初はピアノ曲でも、それを例えば弦を入れて膨らませたり、フルートなどを加えてみたり、っていうイメージにはいきませんか?
三柴 三柴
過去にも、スタジオでいろんな方に演奏してもらったことがあります。ただ、なかなかいい人と巡り会わない、というか、とても有名な人が演奏してくれる、と思って期待をもって一生懸命に譜面を書くんですけど、スタジオに入ると、あまり深く考えて演奏してもらえないこととかが多かったんです。録音直前まで話してたり、携帯いじってたりで(笑)。
篠田 篠田
三柴さんはピアノ一本で世界を作っている人だからね。深く入り込んでくれる人は限られてくるのかな。
三柴 三柴
篠田さんとかすごくうらやましいのは、いろんな楽器の人たちとやってるじゃないですか。篠田さんは、PIVOTもそうですけど他のセッションでも、その場にひょっと行ってパッと音で仲良くなれるみたいな。僕はなんか悲しいかな、人と続かないんですよ。たとえば弦であったりすると、なんかどうも長続きしないんですよね。
でも、キーボーディスト同士だと、なんか仲良く連弾とかできちゃう。こないだも、小川文明さんとVOXVOXというユニットをやったんですよ。そういうのはすごく楽しいですね。小川さんも今、ピアノに目覚めて一生懸命練習してるみたいですよ。
篠田 篠田
ピアノを演奏するとき、心がけていることは何ですか?
三柴 三柴
ライブの話になるんですけど、ピアノの前に座ったら、1音目を弾き出そうっという空気感からすでに音楽が始まっていると考えています。大切に弾いてる感じを出すことが大事なんじゃないかと。どれだけピロピロ弾いてミスタッチしないかということよりも大切だと思ってます。もちろんミスタッチしちゃったらみっともないですけど、ピアノ・ソロの曲というのはその人の思い入れや情感などが人にすごく伝わっていくわけですから。篠田さんにも、ぜひピアノ・ソロのライブとかコンサートをやってほしいですね。
篠田 篠田
ソロ・ピアノだけというのは、もう少し練習しないとダメかな。でも実現したいです。三柴さんとも連弾とかピアノ・デュオなんてできたらおもしろいですね。
三柴 三柴
それは、いいですね。小ホールとか狭い場所でもいいからやれたらいいですね。
篠田 篠田
それでは、今日は長々とどうもありがとうございました。

ツーショット

雑談を終えて

三柴さんとの対談は、かなり長時間にわたりました。お互いのアルバムを再度聴き直して意見を言い合ったり、ピアノを前にして実際に音を出し合ったり、お互いの譜面を参照したり……とても有意義な時間が流れていきました。とても楽しかったです。
僕も体が大きい方ですが、三柴さんは僕よりも一回りも体が大きく、夜とか街頭を歩いていたら、その風貌からしてもちょっとコワイかもしれません(失礼)。でも、実際にお会いすると、全然違うんです。とても穏やかで細かい気配りも忘れず、そしてとても楽しい方でした。
今回の対談を通して、三柴さんの力強く繊細なピアノにあらためて魅せられました。そして、僕もピアノの腕を上げて、ぜひ一緒に演奏できればと思っています。

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