Foresight 制作ドキュメント

レコーディング&ミックスで使ったNUENDOシステム

本作のレコーディングはスタインバーグ社のオーディオ・ソフトNUENDO2を大々的に使っています。今までレコーディングといえば、ProToolsなどのシステムを使ってきましたが、レコーディングの入る時期にNUENDOがバージョン2にアップされ、同社からもご協力のお話をいただきました。僕自身もパソコンの処理能力がこれだけ向上したなかで、オールPCベースで、どこまでできるのだろうという強い興味があったし、また自分のアルバムなので実験的な試みもいろいろできるだろうということで、NUENDO2を採用することに決めたわけです。

NUENDONUENDO2は、Mac/Winとも動作しますが、パフォーマンス性や環境面などから、Winプラットフォームで使うことにしました。ただ、MOTO MUSIC STUDIOは完全にMacベースでシステムが組まれているし、Winマシンはかなり古いマシンしかなかったので、これを機会に買い換えようということになりました。マシンはカスタマイズ性や予算面などから、自作PCでいこうということで、Intel(R)Pentium(R)4 /2.80CGHz、メモリ1GBといったそこそこ速いマシンをこの手に詳しい方に組み立ててもらいました。無論、ハードディスクはバックアップを含めて膨大な容量を用意しています。

実際のレコーディングに入る前に、エンジニアの川上真一氏を含めてNUENDOの動作を細かくチェック。100を超える再生トラック、プラグイン・エフェクトの使用限界、モニター時のレイテンシーなど細かく見ていきましたが、かなりハードな使用にも耐えられることが確認できました。PCベースでここまでいけるのか、正直驚きました。この段階で、レコーディングは音質面や全体のバランスを考えてすべて48kHz/24ビットで録音していくことに決まりました。

PC実際に録音した音は、音の輪郭がしっかりしていて、エンジニアの川上氏も細かなダイナミクスの表情がしっかり録れていると感心しておりました。無論、音質面に関しては、マイキングを含む音の取り方やオーディオ・インターフェイスとの相性など、さまざまな要素が絡むことですが、NUENDO2そのものが持つ原音忠実性、音の質感の高さは十分に伝わってきます。本作に参加ミュージシャンもレコーディングされた音の良さにかなり満足しておりました。

また、NUENDOはレコーディングだけでなく、ミックスも同ソフト内で行っています。通常、レコーディング・トラックを外部ミキサーのフェーダーに立ち上げ、EQやアウトボードのエフェクターなどを使いながらミックスしてきたので、今回のようにソフト内のミキサー画面だけでミックスを行うスタイルは、何となくDTMの延長上のようで“大丈夫なのかな?”といった心細い気持ちも正直ありました。また、NUENDOに録音された音は、高品位なのですが、その分、外部ミキサーや外部エフェクターなどを使うことによって加味される音の太さなどの良い意味でのハプニング性などもソフト内のミックスだと期待できないのでは、という気持ちもあったわけです。しかし、そういった不安を抱きつつも、ソフト内でミックスをやってみたいという興味の方が勝り、オールPCを基本にミックスを行ったわけですが、これが予想以上に好結果を生みました。NUENDOは、あらゆる作業を自由にカスタマイズできるのが魅力です。ユーザー・インターフェイスの質の高さは、そのまま音作りの作業にも良い影響を及ぼしたと言ってもいいでしょう。

ちなみに、使用したVSTプラグイン・エフェクトはNUENDO2に標準装備されているものがほとんどです。ダイナミクス系では、Magneto(テープコンプレッション)、Dynamics(オートゲート、コンプレッサー)などに加え、ディレイ系、コーラス、フェーザーなども標準のものを結構使いました。リバーブに関してはプラグインのものに加えて、PCM70(Lexicon) 、SRV-330(Roland) 、MU-R201(SONY) の3台をデジタル・リバーブを使っています。そういった意味では完全なソフト内ミックスではないのですが、これらリバーブのリターンもオーディオ・インターフェイスに直接入力し、外部ミキサーを通していません。また、ミックスの最終段階では、オーディオ・インターフェイスのデジタル・アウトからQUANTUM(dbx)に入力し、そこでゲイン調整後にDATに落とすという方法をとりました。 バウンスは一切行っていません。最終マスターはDATです。

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