Foresight 制作ドキュメント

ミックス&マスタリング

ストリングスのダビングが終えた直後にミックスに入りましたが、マスタリングの日程まであまり日がなかったので、実際にはシンセ・ダビングの合間にも併行して、ストリングスの入らない「Syaos」「Presto」「It’s Your Love」などのミックス作業を併行させていました。

長時間かけてやっとミックスを終えたものでも、翌日聴くと、やり直したい箇所が出てくるというのはよくあることです。ミックスは正解がひとつではないし、良し悪しの判断基準が難しいところがありますが、今回はとにかく悔いを残さないように、じっくりと臨みました。一度ミックスしたものをウチのスタジオ・モニターだけでなく、ときにはコロムビア・スタジオのモニター、ラジカセ、オーディオ・セット、川上氏の自宅、さらにはカー・オーディオなどでも出音をチェックし、曲によっては何度もミックスをやり直しています。ちなみに「Syaos」はエンジニアの川上氏のこだわりがあってか、4回くらいやり直したと思います。ただやり直すといっても、ソフト内ミックスですから、すぐに前のミックス状態が完全復帰できます。アウトボードのエフェクターの音もキャラクターが再ミックスのときに再現できるようレコーディングしておき、パラメーターもメモをとるなどして、いつでもやり直しができる状態にしておきました。また、10曲目の「Presto (Break through Version)」は、ミックスと同時に作っていきました。打ち込みパートはデモ・データに手を加えて、篠田とyaboのソロを別日にレコーディングしています。そんなわけで、ミックスにはかなり時間をかけています。のべにすると丸々2週間以上はかかっているでしょう。

マスタリングは2003/9/10(水)にコロムビア・スタジオで行っています。 マスタリング・エンジニアは川上氏が多くの仕事を通じて信頼している佐藤 洋氏にお願いしました。川上氏は佐藤氏の音作りをある程度想定してミックスしてきた面もあったので、マスタリングでやるべき目的意識がしっかりと固まっていたのが大きかったと言えるでしょう。無論、最高の仕上がりです!

川上真一氏レコーディングに引き続き、ミックスを担当してくれた川上真一氏。彼のホームグラウンドはコロムビア・スタジオで、Protoolsをずっと使ってきたため、レコーディング開始時にはNUENDOのオペレーションに少し慣れない様子でしたが、これがミックス時の頃になると、完全に使いこなしていました。ソフト内ミックスなので、大きいミキサーは単なる台になっております(笑)。
NUENDONUENDOの「White Line」のミックス画面です。トラックはストリングス・セクションでしょう。川上氏のミックス作業を見ていると、どんなパートも、細かくダイナミクスを書いていきます。例えばソロ中も、演奏内容をよく把握した上で、オケ中で聴きながらプレーヤーの気持ちになりきり、一緒になってリアルタイムでマウスを使いながら抑揚を書いていきます。もとの演奏のダイナミクスを生かしつつ、オケ中ではマスキングされているフレーズを機微に持ち上げたりと、とても音楽的なミックスを施してくれました。
コロムビア・マスタリング・ルーム6コロムビアのマスタリング・ルーム6です。ここで本作のマスタリングが行われました。このスタジオはSONIC SOLUTIONSのようなハードディスクを使うシステムではなく、独自のマスタリング・システムで組まれています。前作『Floating Colors』のときも、部屋は違いますが、ここでマスタリングしていたので、音作りに関しては完全に信頼しておりました。マスタリングは丸1日で終えています。
佐藤洋氏マスタリング・エンジニアの佐藤 洋氏。マスタリングでは大きな色付けはほとんど行っていませんし、ダイナミクスを失せてしまうような過剰なレベル上げも行っていません。佐藤氏は実に細かいEQ操作を繰り返しながら音作りをしていきましたが、音の質感がみるみる向上していくのがよくわかりました。素晴らしい仕事振りで本当に感動しました。
ちなみに、篠田はこの頃、もろもろの仕事が重なってまたしても2日完徹夜状態。翌朝は早朝より浜松行きという状況でしたが、アルバムの完成の嬉しさで、まったく疲れ知れずでした。
篠田元一これで、『Foresight』の制作記は終了です。全体を通して、いろんな意味で等身大の自分が表現できたし、すべてが自然に流れた作品作りだったように思えます。自分の音楽人生の中で、大きな節目になりました。次はどんなアルバムを作るのか、みなさんも期待しててください!
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