冨田勲 新作『イーハトーヴ』制作ドキュメント

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2012/11/10:初音ミク調教および鍵盤アサインの追い込み

本番まで2週間を切り、漢那くんのミク調教も追い込みがかかります。また、それをどう僕が演奏する鍵盤上にアサインするか、これらデータ調整の追い込み作業に入りました。随時、ネット上でデータの交換などは行ってきましたが、やはり細かいニュアンスや機微な表現は一緒にその場で議論しながら調整した方がはかどるのは言うまでもありません(とはいっても、この作業は本番直前までいろいろやっておりましたが…)。この日は公演主催ビルボードジャパンの恩田健志さん(公演制作全体統括)と日本フィルハーモニー交響楽団の河村由紀子さん(公演制作)が、疲れ切った我々を労いに足を運んでくれました(上写真:右下)。まぁこのとき僕は他にも仕事がいくつか重なってしまい発狂寸前でしたが(笑)。

2012/11/12:冨田先生のミク・チェックとシンセの音色決め

ツーショット グループショット

翌日、冨田先生がお見えになり、ミクの状況確認。僕は前日から徹夜のままですが、冨田先生も昼間は長時間のラジオ番組収録を終えてから夜もかなり遅い時間のお越しで、さぞかしお疲れだったと思います。でも全然元気なんですよね(笑)。すごいバイタリティです〜。ミクの状況を実際に演奏しながら聴いていただき、概ねOKを頂きましたが、この段階でも果たしてオーケストラを前にしてちゃんと鳴らせるか不安が…。まだこの段階では自信が持てておりません。

また、この日の目的はサポート・シンセの岩崎健一郎が鳴らす、手回しオルガン、リード・オルガンなどの音色決めを冨田先生にチェックしてもらいながら進めていきました。当初はFANTOM X7やJUPITER-80を使う予定でしたが、いろいろやってみて最終的にはJUPITER-80とINTEGRA-7の組み合せで鳴らすことに決まりました。岩崎の演奏するシンセパートも「銀河鉄道の夜」など重要な場面が結構あります。指揮に合わせて安定した演奏が、そして僕との演奏連携も大事なので、ここは一番弟子の岩崎に任せた次第です。

2012/11/13:PA音響まわりの打ち合わせ

 

この日の打ち合わせは、僕の演奏するミクの歌声を会場でどのように鳴らすのか、またオーケストラのどのセクションにミクの音をモニター送りするのかなどを決める重要日でした。打ち合わせの参加者(上写真:左上)は、左からPA担当の田中賢氏(エス・シー・アライアンス)、本番ステージをCD録音するコロムビア・チームからは制作ディレクターの国崎裕さん、録音チーフ・エンジニアの塩澤利安さんに加えて、前出の恩田さん、河村さん、僕、岩崎、さらに札幌のクリプトンの社内からことぶき君と初音ミク舞台監督助手の足立高視さん(ハーモニクス)もSkypeで参加しています。

まず、ミクの歌声は僕の足下のアンプスピーカーから鳴らした方が、そこにミクがソリストとして点在している感じが出せるとの意見もありましたが、最終的にはミクが投影される会場スクリーンの両脇のPAスピーカーから出して視覚的にも音は映像に合わせることに決まりました。またオーケストラのメンバーは基本的に指揮に合わせて演奏するのは当然ですが、タイミングのシビアな梯郁夫さんを筆頭とする打楽器セクションなどにはやはりミクのモニター返しの要望が出されました。しかし、ステージに上がるミク部隊などにもミクのモニターが必要であり、あまり多くのモニターをステージに何台も置いてしまうと、オーケストラの収録でのカブリの多さが懸念されます。そのため、BOSEの小型モニターを必要な人の側に置いて、できるだけオーケストラの録音へのカブリがないようセッティングが決められていきました。

なお、本番同日はオーケストラの音は基本クラシック・コンサートなのでPAで拡張しておりません。岩崎のシンセもオケ内で点在融和するようにPAからは鳴らさず、彼の足下のアンプスピーカーから鳴らすことなどもこの日に決められました。つまりPAから出ていたのは基本的にはミクの歌声だけです。

2012/11/18:大友直人氏と急遽打ち合わせ

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オーケストラとのリハを翌日に控えた前夜、指揮者の大友直人氏より、主要メンバーは招集できないかと呼びかけがあり、急遽、六本木のビルボード・オフィスでミーティングが行われました。オーケストラの僕の位置やシステムをコントロールするミク・チームの配置場所は、それ以前から何度もディスカッションが重ねられて決められていました。その段階では配線やケーブルの安全性を持った長さ、連携のとりやすさなどから、横一直線でミク・チームは並んでいたのですが、大友氏から指揮のしやすさやオーケストラとして美しさなどの再考要望が出され、いろいろ議論を重ねた結果、大友氏の提案が活かされて上図のような配置に最終決定となりました。つまり、指揮者の前に僕が座り、囲むようにストリングス・セクション、チェロの後方にミク・チームとなったわけです。

この日は冨田先生、僕、ことぶき君と大友氏との間でかなり細かい打ち合わせも行っています。一部始終はNHKも取材収録されております。ミクをオーケストラで鳴らすシステムはこの段階で完了していますが、絶対あってはならないこととして、僕からは「最悪、システム全体がバックアップを含めて本番で落ちたら、予期せぬトラブルで鍵盤からミクが鳴らなくなったら…」非常に苦しいテーマを出さざるおえませんでした。最悪、トラブルを起こした楽章から再度、その場で演奏をやり直すか、アンコールでやり直すかなどの取り決めも、大友氏とこのとき綿密に行っています。人為的なミス、オペレーション・ミス、ステージでの電源事情や結線が不意に抜け落ちる可能性などがゼロでないのは、このステージに限ったことではありませんが、ライブ配信や一発勝負のCD収録もあって、いざというときの対応をみんなで共有したわけです。まぁとにかく、今回のステージはそれほどデリケートに神経を使うことがメチャクチャ多かったというわけです。

さて、明日からはいよいよオーケストラとのリハーサルが始まります。楽しみなような、不安なような……。

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